2010-10-12

職漁と化した1日

私は根っからのお馬鹿のくせに格好付けという体たらくだ。
以前はフグの味についてもロクな見識もないくせに「フグなんて雑炊を食うための贅沢だ」なんてほざいていた。

これは手の指で余る程度に河豚料理店にお邪魔して、定番の お通し・てっさ・白子・てっちり・雑炊・鰭酒 コースをいただき、毎回その料金に青褪めた経験からだ。

こんな馬鹿でも歳を取ると少しは賢くなることもあるようだ…。
今ではフグを「こんなに美味しいものはない」という認識を持つまでに至り、諳んじることができるメニューだけで 干物(塩・醤油)、唐揚、刺身(皮剥の肝和え)、塩焼、てっぴ、タタキ、握り、白子焼き、煮こごり、フグ飯、骨ラーメン、骨せんべい と、まずますの数だ。
(河豚屋もコースを止めて大衆的なフグ料理に切替えればいいのに…)

これもそれも釣人になったことの恩恵なのだが、料金に対する認識は改まらない。
何しろ、私が乗ったフグ乗合船で最も安いのが吉野家さんで8,900円(餌1パック込)。
最低釣果は2尾(これも吉野家さん)。

除算すれば1尾が何と4,450円となる。
これは高か過ぎる!
しかも釣ったフグがトラならまだしも、これはショウサイの料金なのである。

このフグによるインフレーション(私の釣り下手さ)も徐々に改善に向かいつつあるが、それでも甚だしく不経済だ。
何としても改善を急ぐ必要がある。

そんな美味しくも贅沢なフグを愛する1人の料理人がいる。
自からも釣りに出掛け、釣ったフグを店の献立に並べるこの御仁は、私が行き付けている割烹の親父さんだ。(因みにフグ免許はご子息が取得・登録されており問題ない)

彼の親父さん、フグ釣りは今まで同じ浦安から出ていたものだから(所謂「湾フグ」)数は期待できない。
そこに過日の私の爆釣を知ったもんだから「外房に行けばそんなに釣れるのか?」とテンションが弥が上にもあがり、今回の釣行が決まったのである。

そういった意味でこの釣行は私のレジャーという位置づけから外れ、職漁となったのだ!
何しろ献立に「フグ」という文字を並べる "義務" が生じたのだから、お客様の至福のひと時は私が半分担ったわけである。

こうなるとなり振り構ってられない。
日帰り可能で、高釣果・良型で安定している宿を厳選しなければならない。
そこで選択したのが鹿嶋港・幸栄丸(こうえいまる)さんだ。

初めての釣宿、初めての茨城釣行(道に不案内)のため、早目に出発したせいで現着は4時。
出船5時まで1時間あるが、周りは車、車、車…。
さほど大きいとは思えない港は、剱崎・松輪港を彷彿させる釣人で溢れている。

ご当地の方には失礼だが、茨城の港=鄙びた少しルーズな港という先入観があったが、全て裏目だ。
釣座を確保しようとしたら、今日のフグは4艘出すと言うし…。
女性アングラーが同じ船に4人も乗っていたし…。
ガンガン移動して活性の高いポイントを捜す操船だし…。

とにかく4艘にはビックリした。
ひとつの釣物に同じ宿から4艘なんて聞いたことがない。
小さな船ならいざ知らず、4艘のうち3艘は大型船だ。
どうやってこの人数が釣ったフグを捌くのだろう…?
そんな疑問を抱きながら幸栄丸さんは定刻に岸払いしたのだった。


当日は、晴れ、東南東の微風、中潮 水温21度 超澄み潮 波1.5m 潮流れず 右舷艫から3~4番という条件。
べた凪だったお陰で穂先に集中し易かった反面、船頭曰く「潮が澄み過ぎなので船の影が底までとどき喰いが悪い。反応はあるのになぁ~」という状況。

20t前後の大型船を大きな生命体とフグが勘違いするなら、クジラ位なものだろう。
クジラはフグを喰うのだろうか?
などとくだらん事を連想するが、フグのプレッシャーを感じさせないところまで仕掛を遠投することも出来ず、丁寧に船下を狙うしかない。

何しろ当日は職漁でもあるし、インフレを少しでも脱却しなければならない。
竿先の僅かなモタレも見落とせば、お客様の幸せと、フグ貧乏からの脱出ができない。
が、この集中が後で仇となる。

喰いが悪くも流石に連日の釣果速報は伊達じゃない。
湾フグで俄ボウズに馴れているせいか、鹿嶋の海はアタリの宝庫である。
"ぷッ" でアワセを入れポツポツと拾うのだが、なぜか私に釣れるのは13cm程度の小振りなフグばかりで、お隣りさんと親父さんは25cm程度の良型がたまに掛かる。

あまりにも私に小型ばかり続くので、ツ抜けした頃に何でだろう?とお隣りさんを拝見する。
「あっ!(アタリ)、あぁ~あ、もう遅いか?」と思っていた瞬間、ガッガッガッとでかいアタリが襲来。
すかさずアワセ。
良型のフグが上がってくる。

鹿嶋のフグはサイズの良さとアタリのデカさが比例しているようだ…。

竿を取り、大きなアタリが出るまで待つと確かにでかいフグが掛かってきた。
「しめしめ、読み通りじゃ!」
何~んてニヤニヤしていたらこれを境にアタリが遠のいてしまったのです(涙)。
間もなく「はい上げてぇ~、大きく移動するよぉ~」と虚しいアナウンスが入る。


船長が言うように陽が高くなると、潮が澄みすぎて仕掛は10m下まで視認できるような状況に…。
こうなると船中音なしで、アタリが無ければ、集中の糸も切れてしまう。
沖上がり間近に盛り上りがあるも、中弛みの時間が長く数伸びずにタイムアップ。


私の釣果は(職漁のくせして)28尾。
親父さんが17尾釣ってくれたお陰で、合計45尾で、お店には何とか面が保てました。
そして私のインフレ値は@375-/尾と、こちらも何となく高いようで、安くなったようで…の半端な値。
いやいや、これは湾フグじゃないので、まだまだ赤点ですな。
しかも竿頭48尾で、ダブルスコアに近いし…。

それでも、沖上がり間近の盛り上がり時にお隣りさんが「これが何度もないと駄目なんだよ~」と呟いていたし、隣りの隣りのお姉さんが「こんなに釣れない日は私はじめて~」と笑っておられました…。

聞き漏らしようのないこの発言。
過日の私の爆釣は、鹿嶋港では周年あたり前のことなの?
洲崎のフグは概ね15cmアベレージだったけど、それが鹿嶋サイズだったらどうなんの?
な~んて妄想が腹の中に渦巻いたのは言うに及びませんね…。
近いうちにまた訪れることにしましょう。

因みにここの船長さん、口はちょっと悪いですが、気さくで腕のいい船長ですね。
私に対してだと思うんですが、
アタリなんて取ってんじゃねぇーよ、空アワセだよ!空アワセ!
と何度か怒鳴っていました(笑)。
が、残業サービスもしてくれました。
次は竿頭になってお礼をしたいと思います(竿頭賞は1回分の乗船券だそうですし$)。

2 件のコメント:

  1. うめさん
    幸栄丸さんにはヒラメでお世話になったことがあります。船のでかさにびっくりでした。釣れたヒラメの大きさにも、…お隣さんのでしたが。あの大型船をフグに4杯も出していたとは、またびっくりです。

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  2. ジャックさんへ

    そーなんです。
    びっくり続きの幸栄丸さんでした。
    マイクで受付開始をアナウンスする等、今までにない事ばかり…。
    サービスのカレーライスも休日は米を何合炊くんだか…?

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