2010-09-17

魚の絞め方(美味しくいただく方法)について

このタイトル(魚の絞め方)は、人に聞くと諸説があり、お迷いの方も多いのでは…と思います。
私も実のところ何が正しいのか解らず、いづれ調べてみようと思っていました。

そんな疑問の扉を開けることとなったのが過日の湾フグで、厳密に言えば「フグ免許」のない人は捌いてはいけないお魚…。
じゃ~美味しくいただく為にはどう扱ったらよいのか調べ始めたのがキッカケでした。

いやぁ~、それにしても魚のことになると物調べも楽しいもんですね!

さて、本題に移る前に前置きが必要です。
今回のコメントは参考とさせていただいた記事の転載を中心に進めていきます。
これはケミカルに弱い私では詳細説明を自分の言葉で適切に表現ができないことが多かったからです。
悪しからずご容赦いただきたい。
それでも「魚を美味しくいただく」視点に立ち、私なりのコメントは織り交ぜて行きます。

それでは話を進めてみよう!


1.絞めることによる効能
あまり小さな魚では感じられないけど、きちんと絞めた魚のほうが旨味は強くなります。
悶絶死した魚はアデノシン3リン酸が減少し、旨味となるイノシン酸が生成されにくくなるのが理由です。
また、脊椎(神経)を切断する絞め方は、筋肉に対する刺激が絶たれ、魚の肉質変化が抑えられることから鮮度のよい状態が長時間続きます。

この一文だけで、絞めることの良し悪しが端的に表現されています。
全ての魚は絞めた方が美味しくいただけるわけです。
但し「絞める」ことと「血抜き」とは行為は似ていても、目的が別なので注意して下さい。


2.血抜きについて
魚を絞めることにより血管も切断すると、血が抜けて魚の生臭さを緩和します。
特にカワハギ等の肝を食べる魚の場合、絶対に必要な作業となります。
また、内臓や血液の中にはタンパク質分解酵素が多く含まれており、血抜きをしないと傷むのが早くなります。
微生物の繁殖も早く進みます。

これは読んだとおりですね…。
但し、1.の話にもありますが、その絞め方(血の抜き方)によっては効果が薄れてしまう場合があります。
それは次の3.で説明しますが、とにかく現場では血抜きを必ずおこない、余裕があれば内臓やエラブタも取り除くというのがベストですね。


3.悶絶死について
釣った魚を桶で泳がせておくとそのうちに口を開けて死んでしまいます。
これは酸欠とショックおよびストレスによるものです。
1.でも説明したとおり、悶絶死は旨味となるイノシン酸の生成を阻害するだけでなく、魚の体内に乳酸がたまり、鮮度も極端に低下して味が悪くなります。
更に、悶絶死した場合、その直後から死後硬直が始まってしまうのです。

悶絶死が悪いのであれば、血を抜くためにエラブタを切って桶で泳がせて殺すのは、この上ない最悪行為と言えます。
美味しくいただくためには、釣り上げたらすぐに魚を絞めることです。
同時に血抜きする事でより美味しい状態で持ち帰れる訳です。

私も今まで「エラブタ」派でした…。
なるほど、なるほど…。


4.氷絞め(小魚に推奨されるわけ)
前述、悶絶死で説明のとおり、桶で泳がせておくのは最悪…、でも沢山釣れてしまう小型の魚はどうしたら?
こんな時に「氷絞め」となるわけです。
小さな魚であれば、血抜きしたものと、氷絞め(血は抜かない)したものは、極端に味に違いはありません。
釣れたらすぐに氷絞め(即死)することで、最も簡単かつ質的にも良い状態が保たれるのです。

ふむふむ。


5.水氷は「海水」で作らなければいけないわけ
これは浸透圧の問題で、海水に真水を混ぜると塩分濃度の違いから真水が海水側に流入していきます。
同じように海水に棲む多くの魚は体内にある程度の塩分を保持しており、真水に入れると浸透圧を受け、塩分不足から身が水っぽくなるわけです。

沖釣りの場合、問題となるのが船宿で支給される氷ブロックです。
殆んどの船宿は真水から作った氷ブロックを支給するので、この氷で水氷を作っても氷が溶ければ塩分濃度が低くなってしまいます。
ペットボトルを凍らせたものでクーラーの中を冷やしている人や、ビニール袋に海水を入れて溶けた氷水と分離している人はこの点に注意しているわけです。
但し、海水の塩分濃度は魚体が持つ塩分濃度より高いので、少しくらい氷が溶けても気にする必要はありません。
したがって、水氷は少なくとも海水で作らなければならない訳です。


6.活魚と鮮魚の違い(食べ頃)
我々が釣ったお魚は「生」→「死」→「硬直開始」→「完全硬直」→「解硬(死後硬直の解除)」→「軟化」→「腐敗」という段階を踏んでいきます。
私も余り気にしていなかったことなんですが、生~完全硬直までを「活魚」と称し、解硬中のものを「鮮魚」といいます。
そしてお魚をが一番美味しくいただけるのは、2つの意見があります。
解硬以降(鮮魚)と完全硬直時(後期の活魚)。
この問題については魚種にもよりますし、好みにも左右されます。
例えば、死後硬直は平均5時間~22時間とされているので、釣ってから1~2日寝かしたものが美味しい(イノシン酸たっぷり)と言われる所以でしょう。
一方、釣りたての魚のコリコリとした食感(歯触り)が美味しいという方も多いと思います。
ついては、ここで結論は出しません。
尚、Link情報はとても参考になると思います。

2011.07.02追記
過日、「ためしてガッテン」を見ていたら、五島列島の漁師は、釣った魚は(番組は鯛の特集だったが…)湯引きするのが美味しいという一場面があった。
その後、理由を番組で説明する訳だが、湯引きすることでイノシン酸の生成を促し、更に表皮と身の間に詰まっている旨味も閉じ込めるというものだった。
また、解硬が進んだ魚は旨味は増しているが、歯触りが緩くなるのだけれど、隠し包丁を入れてから湯引きすると驚くほど食感が復活するそうな…。
これは、体液による脂などを洗い流す、所謂臭み抜きも兼ねるようだ。
何れにせよ、自宅では三枚に下ろして皮は引かずに保管することが求められますね。追記以上


7.魚の絞め方
絞め方については、沢山の情報がWEB上に開示されいるので、ごく簡単な説明にとどめます。
魚を締める道具としては、手カギ、ナイフ、神経抜き(ワイヤ、針金)があります。
小型魚は氷絞め、大きな魚はエラの付け根と尾びれの付け根(急所)にナイフを入れ中骨を断ち切って下さい。
更に魚を桶の中で「くの字」に曲げると血が抜けやすくなり、船釣りであれば循環水が回っているので、桶から血の色が消えたらクーラーに移しましょう。

手鉤は使えるのであれば、魚の暴れが少なくなるので便利です。
目の後上あたりに手鉤で刺すと魚は脳死します。
但し、魚は頭を落としても暫く身は生きていますので、全く暴れないという訳ではありません。
また、あまり暴れさせると身に血がまわり、味を損ねますので、手早く処理することが肝要です。

神経抜きは、専用の道具が売られています。
手鉤でも述べたように脳からの信号が止まっても身の方はまだ生きていますので、神経抜きしてあげることで死後硬直の開始を遅らせられます(鮮度維持)。


8.魚の保存温度
このセクションは魚種により対応が異なるのと、クーラーの温度管理は難しいのであくまで参考として下さい。
水産業界(学会)で魚の旨味指標は「K値」として表現されます。
このK値と初期腐敗までの時間との相関関係を保存温度でテストすることによって、どの温度で保管するのが適しているのかLink情報ではテストしています。
結果からすると概ね「5℃」位がベストのようです。

私もこれからはお風呂用の温度計でもクーラーに忍ばせておいて、5℃位となる氷と水の量を管理(経験則)していこうと思います。


9.クーラーについて
釣場からの帰路、クーラーは魚がヒタヒタに浸かる程度に水を抜きましょう。
出来れば5.で説明しているとおり、ペット氷か海水袋に魚を入れ、浸透圧を回避することが好ましい。
もし水氷に直接魚を保存している場合、魚が直接氷にあてると変色や硬直の原因となるので、氷をタオルか新聞紙で包むか、逆に魚をタオルか新聞紙に包むかしましょう。
尚、氷の上に魚を置く方をよく見かけますが、冷気は上には行きません。
出来るだけ魚の上に氷を置くようにして下さい。

現在、クーラーの構造は大きく3タイプに分かれます。
・真空パネル(高級)
・ウレタン(汎用)
・発砲スチロール(廉価)

その他にも消臭機能が付いているものや、真空パネルとウレタンが合体しているものなど様々です。
最高級とされる6面真空パネルのクーラーは、凄い保冷力だと耳にしますが、価格も凄く5万円はします。
高価なものですし、消耗品ではありませんので、購入についてはご自分のスタイル(釣目、釣場から自宅までの移動時間、車移動か電車移動か)を明確にする必要がありますね。
これから釣りを始める(分からない)という場合には、20リットル前後のウレタン製が無難でしょう。

私はLTでは荷物を軽くするために、クーラーはホームセンターで700円位で売っている発砲スチロール剥き出しの安価なもの(通称、トロ箱)を愛用しています。
何しろ、駄目になっても経済的に痛くありませんし、実は発砲スチロール剥き出しがそこそこ保冷力が高いのです。
良いクーラーは耐久性が求められるので、真空パネル等の保冷材をプラスチックで覆う必要がありますが、700円は保冷材が剥き出しなので効果が高いんですね。
河岸やお魚屋さんもみ~んな持ち運びは剥き出しじゃないですか!


10.魚を家に持ち帰ってから
一番大切な事は血を残しておかない事です。
理由は簡単、雑菌が最も好む(つまり繁殖しやすい)のが魚の血液だからです。
ハラワタを抜いておくのは誰でも知っているのですが、この血に関しては意外と盲点なんですよ。
とにかく完全に血合いを落としておきましょう。
次に魚を傷める原因は脂と体液の排出作用です。
脂は表面があぶら焼けし、内部はユルユルになります。
「臭みの元」になる体液が排出されると、次いで「旨味の成分」が排出されていきます
血液・脂・肉汁、この三者に配慮すれば魚の保存は上手くいきます。

他日、魚包丁についてコメントしましたので、興味のある方はこちらをご覧ください。


11.最後に
まぁ~色々と書きましたが、ここに書いたことがすべてではありません。
例えば、私が好きなイカはお魚さんではありませんので、絞め方も異なります。
魚であっても、有名な「松輪サバ」は氷絞めで出荷されており、血抜きしない方が美味しいとされる代表的な例です(どうやら身割れを嫌っているようです)。
また、このコメントで私の理解が間違っていることも多々あると思いますので、気付いたら随時更新するつもりです。
どうかご容赦を。


12.イカについて 【追記2012.12.25】
イカ類の鮮度維持について我々アングラーの認識は「イカは水に浸けない」が原則で、イカ親父の間ではクーラーの底にPET氷を2本置き、その上にスノコを敷いてイカを並べて持ち帰るのが最上とされている。
また、締める・締めないの認識もあやふやで、「締めれば墨を吐かないので、綺麗に持ち帰れる…」程度のもので、締めれば美味いということの確証が得られていなかった。
ところが、ひょんなことからイカの鮮度維持について情報を得たので(Link参照)コメントを追記する。

Link論文は、対象がスルメイカとなるがイカ類全般にも同じことが言えるだろうと小生が勝手に推測したことを前提として要約すると、イカ類は釣れたら即締め、5℃の海水(氷には触れない方がいい。イカとイカの接触も避ける)に酸素を供給して持ち帰るのがベストだという。
そうして持ち帰ったものは24時間経過しても身の透明度が保たれ、更に吸盤も吸い付くような鮮度が保たれるということだ!

この条件をアングラーが満たすのは難しいが、即締めしたイカを海水氷にブクで酸素供給しながら持ち帰ること位だったら可能だろう(東京圏のアングラーであれば、朝一で釣ったイカも12時間後には帰宅・調理できるだろうし…)。
また、イカ類についても前述した魚の鮮度維持(保存温度まで)の結論と重なっていることが興味深い(逆に調べてきたことが正しいと確信を得た)。


イカの鮮度維持についての検証を3/3マルイカでおこなった(実際はこれからおこなう)。
詳しくはこちらをご覧ください。

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